13-2. 材料と反応条件
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1) プライマーの設計
2個で1対となるプライマーが目的配列に安定かつ特異的にアニールするようにしなくてはならない $ T_mの求め方
アニール温度の目安はオリゴヌクレオチドの$ T_m(Tm) $ T_m=\mathrm{2^\circ C\times(A+T数)+4^\circ C\times(G+C数)}
使用する2個のプライマーの$ T_mの間に大きな差がない(5℃以下)ことが、PCR実験成功の秘訣
配列選択の要点
PCRでのトラブルのほとんどが「DNAが増えない」であるが、原因のほとんどはプライマーの配列
プライマーの長さは非特異的なアニールを避けるため、15~20塩基長は必要だが、以下のような状態になっているとDNAはうまく増幅しない
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プライマー同士に相補性がある
1つのプライマー内に相補的配列がある
プライマー間距離(=増幅するDNAの長さ)が長すぎる
通常は2~3 kb以下にする
プライマーの3'末端がAまたはTになっている
3'末端はDNA合成億率に直接影響するので、確実にアニールするように、G, Cにするとよい
類似配列がある場合は、その配列をプライマーにすることを避ける
1対でなく多くのプライマーセットを用いるPCR
2) 耐熱性酵素の選択
表13-1 PCRに使用する酵素標品の特徴
特徴
安価で伸張活性が高い
主な製品
特徴
熱に非常に安定
主な製品
特徴
pol I型とα型を混合し、正確さと鎖新調整の両方の能力を高めたもの
主な製品
特徴
活性中心を熱で解離する抗体でマスクしたもの、高温で活性をもつようにしたもの、酵素をワックスなどで閉じ込め高温で放出させるものなどがある
主な製品
95℃でも大きな活性低下はない
使用する酵素は以下の3種類に分けられる
誤合成のまま伸長が進み、増幅DNAに変異が入ってしまう場合もある 5 kb以上の伸長は効率が悪い
上記2つの酵素を混合したもので、それぞれの酵素の欠点が補われている
pol I型DNAポリメラーゼが伸張後に停止したところを、α型DNAポリメラーゼが校正するので、高い伸張速度、重合の正確性、TdT活性すなわちA付加能を備え、10 kb以上のDNAも増幅できる https://gyazo.com/1252d2d9e581b411ecf25b5cf00bf2ac
3) 反応液とサイクルプログラム
PCRの標準的プログラム(温度サイクルの設定)
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典型的な反応液
温度は変化は通常25~35サイクル程度を行い、最後に反応物の保存のために、4℃で冷却する
PCR機器(サーマルサイクラー)に反応要素を加えた試験管をセットして運転を開始すると、機械が自動的にプログラムを進めるが、以下のような注意が必要 温度設定
変性と酵素反応の温度はそれぞれ約93℃、72℃、アニール温度は$ T_mに設定する アニール温度が高すぎるとアニールしないため反応が起こらず、低すぎると無秩序にアニールするため非特異的反応が増える
蒸発防止
加温で水分が蒸発すると試薬濃度が変化して反応がうまく進まない
水分蒸発を最小限にする方法
フタを加熱して凝結水が付かないようにする
空きスペースの少ない試験管を使用するなどがある
初期の頃はパラフィン(ロウの成分)を重層して蒸発を防いだ マグネシウムイオン濃度
反応液は少なめのMG2+を含むが(1.5 mM)、うまくいかないときはこの濃度を変えてみる
4) ホットスタートPCR
PCRを常温から開始させると高温になる前から酵素が働き、低温でのプライマーの不適切なアニールによって正規の反応が減り、不適切な反応が増える
酵素が高温になってから活性をもつように工夫されている
酵素標品の中には、酵素に結合した酵素阻害物質が高温で解離するようにしたもの、酵素を高温で溶ける基質で包んだもの、高温で活性化するように酵素分子自身を修飾したものなどがある
5) 修飾温度サイクル
温度プログラムを少し変えて、PCRを適切に行わせる工夫がある
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最初の数サイクルのアニール温度を上げてプライマーアニールの特異性を高め、その後標準温度で行う
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裏イマーニ余分な配列が付いている場合(アニールしにくい)、はじめの数サイクルはアニールしやすいように温度を少し下げる
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$ T_mが高い場合、アニールと酵素反応を、$ T_mより少し高い70℃程度の同一温度で行う
増幅の特異性が上がり、時間も短縮できる